歯とセルフメディケーション

お口のケアをするとき、歯磨き粉や液体ハミガキ、マウスウォッシュといった商品を使っているかと思います。今回は、市販されている歯のケアに関わる商品について、薬学的な目線から歯とセルフメディケーションについて解説したいと思います。

CPC(塩化セチルピリジニウム)

陽イオン界面活性剤で、歯磨き粉やマウスウォッシュによく入っている殺菌成分です。トローチにも入っている成分なので、知らず知らずの間に利用していることが多いです。細菌の表面にある細胞壁は普段マイナスに帯電しているため、陽イオン界面活性剤がくっついて、細胞膜に浸透することで中から殺菌することができます。歯にも吸着して、歯垢ができるのを抑えることができます。国内で使われている濃度で十分効果を発揮します。

CPCが含まれている商品 ・・・ リステリン・トータルケア、モンダミンプレミアムケア、GUMノンアルコール等

CHG(グルコン酸クロルヘキシジン)

陽イオン界面活性剤で、国内だと0.0001~0.002%あたりの濃度で使うように制限されています。海外だと一般的に0.12~0.2%あたりで使用されています。0.01%付近で使っている場合は細菌表面に吸着して、静菌的に作用するとされていますが、0.1~0.5%の濃度だと細菌の内部に急速に侵入して、殺菌作用があるとされています。0.35%以上の高濃度CHGによる副作用報告が相次いだため、1985年に一度粘膜への使用を禁止されました。しかし、歯周病原生細菌の増殖抑制報告があるため、現在では0.05%の原液を薄めて0.001%あたりで使用されています。国内でのプラーク抑制について有用な論文が見当たらないため、使用濃度の見直しか、新たに論文が出てこない限り、使用をおすすめしづらいです。見直しによって海外基準になったところで、味覚障害の副作用が33%だったという報告もあるため、継続使用のコンプライアンスが得られるかどうかが気になる成分です。参考までに、糖尿病患者に対する歯周治療ガイドラインにも同様の記載がありましたので、詳しくはこちらを参照してください。 → https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0070/G0000192/0024

CHGが含まれている商品 ・・・ コンクールF、バトラーCHX洗口液

BCT(塩化ベンゼトニウム)

同じく陽イオン界面活性剤で、作用機序もだいたい一緒です。粘膜への刺激性はCHGによりも少ないため、歯医者さんの処方で「ネオステリングリーン」という名前で処方されることが多いです。抜歯後の化膿を予防したり、口腔内の消毒に使われます。陽イオン界面活性剤に言えることですが、しっかり歯磨き、フロスを使って歯垢を落としてから使用するほうが効果があります。バイオフィルムを形成されてから陽イオン界面活性剤を使っても、浸透力が少ないため、効果が小さくなってしまいます。

BCTが含まれる商品 ・・・ クリニカアドバンテージ デンタルリンス、クリアクリーン デンタルリンス ソフトミント ノンアルコール等
歯科医院か薬局零売で購入できるBCT入のうがい薬 ・・・ ネオステリングリーン

上記の陽イオン界面活性剤に関しては、しっかり歯磨きとデンタルフロスで歯垢を落としてから使用する場合は一定の効果があります(CHXは国内濃度の場合不明ですが)。現状は2~3ヶ月に一度、歯科の定期検診を利用してクリーニングを行ってしっかり歯垢や歯石をとってもらうことが優先されます。自宅でマウスウォッシュを使用する場合は、デンタルフロスや歯間ブラシを使って、歯茎と歯の間をしっかり掃除してから使ってください。詳しいデンタルフロスの使い方は三重県歯科医師会のパンフレットが詳しいです。 → http://www.dental-mie.or.jp/hatokutinokenkou/pdf/25shikamburashidentarukurosu.pdf

フッ化ナトリウム

フッ化ナトリウムは歯科の定期検診を受けるとほぼ必ず塗布されるものなので、ご存知の方も多いと思います。フッ化ナトリウムは細菌の活動を抑制し歯質の再石灰化を促進することができるため、虫歯予防に世界中で使われています。薬局やドラッグストアでもフッ化ナトリウム入のフッ化洗口液は購入できます。ただし、ドラッグストアで扱っているフッ化洗口液は第一類医薬品に属するため、薬剤師不在では購入することはできず、さらに、フッ素濃度は0.05%と半分のため、毎日使用する必要があります。医療用医薬品のフッ化洗口液は濃度が0.1%であり、週に2回ほど使用すればよいので、忙しい人でも使いやすいのが特徴です。歯科医師の処方せんか、薬剤師が薬局において対面で販売することができる「処方せん医薬品以外の医療用医薬品」に属しますので、薬局で購入するには、薬剤師が対面して服用方法の指導と販売をします。

なお、どちらの濃度を使用しても、特に効果に差はありませんので、入手のしやすさや継続性といった点を加味して、取り扱っているドラッグストアの薬剤師や当薬局の薬剤師と相談してください。フッ化洗口液は大人の方でも歯頸部う蝕や根面う蝕(歯と歯茎の間の虫歯)の予防に効果があります。フッ化洗口液中のフッ素は、お茶に含まれるフッ素と同じもので、その濃度が高いというだけです。また、フッ化洗口液がインプラントのチタン歯根の腐食に繋がるのではというお話もありますが、今のところ直接関係しているというデータはありません。

なお、フッ化洗口液だけで虫歯を予防するという使い方ではなく、歯磨き、デンタルフロス、歯間ブラシによるケアをした上で、フッ化洗口液の仕上げをするという使い方を推奨します。フッ素入りの歯磨きで十分というお話もありますが、予防効果としてはフッ化洗口液>フッ素入りの歯磨き>フッ素表面塗布とされています。ちなみに、フッ素入りの歯磨きは現在、海外とほどんど同じ濃度かつ安価でドラッグストアで入手できるため、今回のご紹介では取り上げません。フッ素入りの歯磨きを購入される際は、ドラッグストアでお好みの使用感のものを使っていただいて構いません。また、同様に、デンタルフロスや歯間ブラシもドラッグストアで多くの種類を取り扱っているため、使用感によって使い分けをしましょう。デンタルフロス、歯間ブラシは歯医者さんや歯科衛生士の方から使用方法を教えてもらうとよいでしょう。歯周病や虫歯を予防するためにとても効果的ですが、フッ化洗口液の効果範囲を広げるためにも、しっかりマスターしておくことをおすすめ致します。

ドラッグストアで購入できるフッ化洗口液 ・・・ クリニカ フッ素メディカルコート、エフコート(フッ素濃度0.5%)
歯科医院か薬局零売で購入できるフッ化洗口液 ・・・ フッ化洗口液0.1%「〇〇」※〇〇はそれぞれのメーカー名

 

年を重ねても美味しくご飯が食べられることが健康的な生活の維持にも繋がります。歯のセルフメディケーションとして、今回は4つ解説させていただきました。 フッ化洗口液についての考え方、疑問に関しては熊本県歯科医師会のHPの資料がとても詳しいです。また、三重県歯科医師会のマニュアルはとても見やすく作成されているため、これからフッ化洗口液による虫歯予防に取り組まれる方にもおすすめできます。具体的なフッ素洗口のガイドラインについては、平成10~12年度厚生労働省科学研究「フッ化物応用の総合的研究」班編集のフッ化洗口液ガイドラインを参照してください。

熊本県歯科医師会「Q&A フッ化物洗口 要点」 → http://www.kuma8020.com/school/pdf/111031_03.pdf
三重県歯科医師会「フッ化物応用マニュアル」 → http://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000820650.pdf
平成10~12年度厚生労働省科学研究「フッ化物応用の総合的研究」 フッ化洗口液ガイドライン → https://www.niph.go.jp/soshiki/koku/oralhealth/ffrg/m/kenkai03.html
歯科衛生士が知っておきたい洗口剤の応用 → https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/58/2/58_86/_html/-char/ja

Follow me!