市販の胃薬と処方せんが必要な胃薬の違いについて

今回は、胸焼け、ゲップ、逆流性食道炎、消化性潰瘍といった症状に使われる胃薬に関して、薬局で買えるもの、処方せんで扱っているものを解説したいと思います。

H2RA(代表例:ガスター、アシノン)

テレビCMは最近していないような気がしますが、ガスター10やアシノンZでお馴染みの胃薬です。H2RA(Histamine H2-receptor antagonist)と呼ばれるカテゴリのお薬です。胃酸を出す細胞に命令を出しているヒスタミン2受容体の働きを抑えることで、胃酸分泌が抑えられます。H2RAが開発されるまでは、胃酸を抑える手立てがなかったので、胃潰瘍の治療にブレイクスルーをもたらしたお薬です。

食事の影響を受けず(アルコールに影響を与える、後述)、3時間ほどで効果が出てくるため、胃の調子が悪い、胸焼け、ゲップといった症状が出始めているときに使うといいです。ただし、1週間ほどで胃酸分泌に耐性が出てきて2週間後にはあまり効かなくなってくることが多いため、長期で使いたい場合は後ほど紹介するPPI(Proton pump inhibitor)というカテゴリーのお薬を使うことが多いです(PPIは医師の処方せんがないとご用意できないお薬です)。

ファモチジンの他にもラフチジン、ニザチジン、ラニチジンといったH2RAがあります。食べ過ぎ、飲み過ぎ、胃腸炎の初期症状に対して使い分けをあえてすることはないため、ファモチジンで十分対応できると考えています。ドラッグストアでH2RAが入った胃薬を購入するときは、第一類医薬品のため、薬剤師がいないと購入できないので注意が必要です。

逆流性食道炎まで発展すると、H2RAは第一選択薬ではないため、病院での専門治療(PPI投与)が早いです。胸焼けやゲップで弱っている胃をいたわるためにも、ファモチジンによる胃酸分泌抑制で症状を緩和し、その間に食生活を胃に優しいものにするとよいです。ざっくり言えば、脂肪やタンパク質が多い食べ物、唐辛子などの香辛料、根菜といった消化に悪い食べものを控えるとよいです。アルコール分解酵素を阻害する効果もあるため、アルコールを飲んだ状態での服用は二日酔いが強くなる原因になるため、おすすめしません。なお、腎臓が悪い人は量を調節して使用する必要がありますので、かかりつけの医師か、かかりつけ薬剤師とご相談ください。

現在販売しているH2RA成分一覧

・ファモチジン(OTC販売名:ガスター10、ニチブロック10、ベッセン10等)
・ラニチジン(OTC販売名:三共Z胃腸薬、大正エスブロックZ)
・ラフチジン(薬局零売のみ取扱ですが、ファモチジンで十分です)
・ニザチジン(OTC販売名:アシノンZ)

PPI(代表例:パリエット、ネキシウム、タケプロン)※処方せん医薬品

医師の処方せんによって使用することができるお薬PPI(Proton pump inhibitor)は、胃酸の分泌をH2RAよりも強く抑えることができます。H2RAは胃酸を出す前段階で止めようとしていましたが、PPIは胃酸を出す場所そのものにくっついて、胃酸を出さないようにします。細かく解説すると、PPIは胃酸によってスルフェンアミド体に変化して、胃酸を出す場所(プロトンポンプ)のシステイン残基と呼ばれる場所にとても強力に結合(ジスルフィド結合)することで、胃酸分泌を止めることができます。

しかし、飲んですぐに効果が出るわけではありません。だいたい3~4日後から胃酸分泌抑制作用が出てきます。何故かと言うと、PPIは飲んで胃に直接作用しているわけではなく、腸で溶けて、血管に入ってから、胃の細胞に到達してようやく効果を示すからです。胃酸にとても弱く、胃細胞の胃酸が出るポイントに到達する前に分解されてしまうため、回り道して、血管から胃の細胞に出てきて、活性化されてから胃酸を止めるという感じです。胃酸で活性化するけども、胃酸に弱いというなんとも言えない薬です。

このPPIは逆流性食道炎や胃潰瘍と診断されると真っ先に処方されるお薬の一つです。この薬は基本的に、調子が悪いと飲んで、調子が良くなったら中断というものではありません。前述したとおり、即効性がないためです。処方された日数分しっかり飲み切るほうが効果がでます。逆流性食道炎に関して言えば、H2RAは治療率52%くらいなのに比べて、PPIは84%の治療率をもっています(8週間使用した場合)。H2RAを倍の濃度で使ってもPPIの治療成績を上回ることができないです。1週間ファモチジンを使っても症状が改善しない場合は医師の専門治療によるPPI処方をおすすめしているのは、治療成績の観点からです。

余談ですが、PPIは海外では大型スーパーでも手に入ります。2018年の春にPPIがOTCとして一般のドラッグストアでも販売できるかどうか検討されていましたが、見送られた経緯があります。零売でも販売できないのがとても残念です。なお、PPIは人によっては効果が出にくい人がいることが遺伝学的にわかっています。PPIの中でも、ラベプラゾールとエソメプラゾールは比較的多くの人に効果がありますが、8週間使っても効果不十分の場合は後述するタケキャブ(P-CAB)の使用が検討されます。

P-CAB(タケキャブ)※処方せん医薬品

P-CAB(Potassium-Competitive Acid Blocker :商品名タケキャブ)は最近販売された、PPIの弱点を克服したようなお薬です。PPIの弱点とは、「効果が出るのが遅い」「酸にすぐ分解されてしまう」「PPIのように効果が出づらい人が少ない」の3つがありますが、タケキャブは「すぐに効果が出る」「酸に安定」「効果に個人差が出にくい」と、とても使いやすいのが特徴です。胃酸が出るプロトンポンプには、カリウムというイオンが必要ですが、タケキャブはそのイオンの通り道を塞ぐことで、プロトンポンプが稼働しないようにすることができるお薬です。また、PPIに比べると胃酸に安定なので、プロトンポンプのイオンの通り道を塞ぎ続けることができます。

2014年に発売されており、発売されて20年以上経っているPPIと比べると、長期使用の副作用のデータの蓄積が少ないのがデメリットです。PPIで十分効果が出ている人があえて使うお薬ではないです。タケキャブも薬局では販売できません。医師の処方せんによってご用意できるお薬です。治療成績はPPIと同等かそれ以上です。

上記3つのカテゴリのお薬は胃酸の分泌を止めるお薬(攻撃因子を抑えるお薬)です。次は、胃酸から守るために使われるお薬について紹介します。

スクラルファート(スクラート胃腸薬、イノセアグリーン等)

胃と十二指腸の潰瘍部分のタンパク質に選択的に結合して、保護層を作ってくれるお薬です。胃がキリキリ痛むような場合に適していますが、そもそもタンパク質が露出していない(潰瘍がない)場合はあまり効果がありません。なので、スルラルファート単剤での使用はあまりおすすめしていないです。空腹時に使うことで保護層を形成しやすいです。一度保護層が作られると、6時間位は効果が持続します。基本的に1日3回、空腹時に使いますが、金属イオンが入っているため、他のお薬との飲み合わせが悪い場合があります。飲み合わせの問題を回避するためには、飲み合わせの悪いお薬と2時間あけて服用することが求められますが、飲み続けることが難しくなってしまいます。また、透析されている方は使えないお薬です。

水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム(サクロン、液キャベ等)

サクロンなど、総合胃薬には漢方薬(安中散がメイン)とセットで水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなど、胃酸を中和するためによく配合されています。胃酸の攻撃力を少しでも弱めるために使います。金属イオンはお薬との飲み合わせが悪いことがあるので、使用する際は今飲んでいるお薬との飲み合わせが大丈夫かどうかしっかりかかりつけの医師、薬剤師と確認し合うことが大事です。特に、抗生剤と一緒に服用すると抗生剤の効果が大幅になくなってしまうことがあるため、抗生剤を飲んでいる意味がなくなることもあります。

レバミピド(ムコスタ)

胃粘膜を増やして胃酸からの攻撃を守るようにしてくれるお薬です。よくロキソニンとセットで処方されることがあります。これは、ロキソニンやアスピリンといったお薬(NSAIDS)が胃粘膜を減少させてしまう副作用があり、胃粘膜を増やして副作用を抑制するためです。胃潰瘍や逆流性食道炎で胃粘膜が少なくなっているときに補助的に使います。このお薬単体でどうにかできるという感じのお薬ではないです。ロキソニンやアスピリンで胃潰瘍が起きてしまう副作用をNSAIDS潰瘍といいますが、長期間使うときはこの副作用をコントロールするためにも、胃の調子が大丈夫かどうか、医師、薬剤師と相談しながら使用するようにしましょう。胃潰瘍には素直にPPIを使うほうが治りが早いです。

安中散(あんちゅうさん)

ガスターを使っても、市販の胃薬を使っても良くならないというときに使われる漢方薬です(市販の胃腸薬で漢方が入っている場合、だいたい安中散です)。慢性的に胃の調子が悪いときや、胃がキリキリするようなときに使うことがあります。西洋薬では効果が出づらいときに処方されることがあります。

六君子湯(りっくんしとう)

PPIやH2RAと併用すると効果が出やすいとされている漢方薬です。一般的には、食欲不振や消化不良、みぞおちのつかえといった症状に使われます。六君子湯単独で逆流性食道炎をなんとかする感じではなく、西洋薬であるPPIやH2RAと併用して処方されることがあります。ストレス性の症状にも効果があるとされ、六君子湯が現場で出ることは割とよくあることではあります。

※管理人個人の意見ですが、胃潰瘍や逆流性食道炎の診断がついた場合は、よほどの理由がない限り、PPIでの治療をおすすめしています。

 

参考文献

逆流性食道炎の治療ガイドライン → https://www.jsge.or.jp/files/uploads/gerd2_re.pdf

消化性潰瘍の治療ガイドライン → https://www.jsge.or.jp/files/uploads/syoukasei2_re.pdf

Follow me!